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知らされない愛について  岡知史

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わたしがいつも持って歩いているエッセイ集

岡知史教授のもの

「知らされない愛について」

こころがささくれたとき・・・イライラしたとき・・いつも読む
その中でわたしのこころにやさしいエッセイのひとつ

「知らされない愛について」

愛というものは知らされないものだと思う。もちろん知らされる愛もある。
ぼくたちが知っているのは知らされた愛ばかりだ。
プレゼントをもらったり、愛の言葉をならべた手紙を受取って、愛を知るときがある。
 しかし、知らされた愛がすべて真実のものであるとは限らない。

知らされる愛がある一方で、知らされない愛がある。
知らされない愛は永遠に気づかれないままなのではないか・
  そして、それは知らされる愛に比べて
    ずっと深く広く、ぼくたちを背後から見守ってくれているのだという気がする。

知らされない愛はきっと純粋なのだ。
 報いを求めていないからこそ、
愛されるものには決して知らされることはないのだろう。

それは自身を隠しているのではなく、むしろ知らせるということには
 何の関心もないのだろう。
そして、もしも、それが思いがけなく、ぼくたちの目の前にあらわれたとき、
     ぼくたちは、岩かげに眠っている天使の横顔を見つけたような驚きを感じるに違いない。

例えば
アルツハイマー病によって、まだ50代の若さで、
  妻の顔もわからなくなってしまったひとりの人と出会ったことがある。

彼は非常な貧困のなかで若くして結婚し、病弱な妻と幼い息子のために、
 きわめて劣悪な労働環境の町工場で働きつづけた。
やがて、20数年間、鉄粉のとびかうなかで働きつづけたために肺を病み、倒れ
 在宅生活を強いられることになる。
心臓病が持病の妻は、その間も入退院をくりかえしていた。

病苦と貧困と家族への思いに苦しんだ彼に安らぎが与えられたのだろうか。

在宅生活を数ヶ月続けると、
 彼は妻の顔もわからなくなった。
  妻は医師の制止を振り切って退院し、
   文字どおり自分のいのちを危険にさらして、夫の介護をすることにした。

その女性が、涙を浮かべながら微笑んで、ぼくに語った事は

痴呆のために何もかもわからなくなってしまった夫が、それでも毎朝、
 おびただしい鉄粉を中に浮かべていたあの町工場に行こうとすることである。
彼女が止めようとすると
 彼は「姉さん(彼は自分の妻は入院していると信じており、目の前の妻を姉と思い込んでいる)、
わしが(工場に)行かないと、家族が食っていけなくなるんだ」と
  必死になって訴えるのである

 そのとき妻は初めて無口な夫の深い思いを聞くことができたという。
いままでも仲の良い夫婦だった。
しかし、その口から直接に何か語られるということはなかったのだろう。


 下着姿のままボロボロになった古カバンを腕にかかえ、
  彼は毎朝、 もはや閉鎖され壊された工場の跡地に向かおうとする。

 妻は、心臓病の発作を恐れながらも、 
  鉄粉に汚された肺で懸命に息をしながら走るようにして歩く夫の後を追うのである

 彼はこのような病身の妻の命がけの介護を、
   決して知ることなくその生涯を終えるだろう

愛は知らされないものである
  知らされない愛が
   僕たちにどれだけ与えられているか、
それは僕たちには決してわからない

  しかし知らされない愛のひとつが

 もしも 知らされるのだとしたら
    それは 偶然のできごとか、あるいは悲しいことだが
  愛する者の崩れた姿のなかに現われるのである


 自分の戒めのひとつです
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プロフィール

藍たなけん

Author:藍たなけん
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仙台に住んでいます。
青森県津軽生まれ、B型 うお座 
主人と二男と3人暮らし
自死で長男を亡くしてます。
「悲しみは愛」「悲しみは愛しさと共に」「悲しみは私の体の一部」「悲しみを奪わないで」「悲しみを消そうとしないで」などを広めています。

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