
中川さんのFacebookから
ー乱用されるPTSDー
野田正彰氏はPTSDの患者など診たことないという。
自称PTSDを名乗る人にとっては見逃せない発言だろう。
私もその真意を測りかねていたが、今日発売の高知新聞のコラムで氏の真意が一部理解できたのでお伝えしたい。
以下は、私の要約+作文なので、正しく理解されたい方は同コラムを読んで頂きたい。
そもそも、災害被害者(奥尻島津波、島原噴火)や
大規模事故被害(日航機墜落事故)からナチスドイツの収容所、スターリン体制生き残ったソ連の人々など、人々の喪失とその悲哀を一番研究、論述したのは野田氏であった。代表作『喪の途上にて』は私も読んだ。
そもそものPTSDの定義とは、アメリカのベトナム戦争帰還兵の一連の問題行動、精神症状の訴えをまとめたものであった。
ベトナム戦争帰還兵は、現地では、殺したベトナム兵(実際には農民も多数いた)の数を競うように強いられ、帰国後は不正の戦争に加担したものとして非難された。二つの責め苦に帰還兵たちの精神は混乱した。
戦争の精神医学を研究していたリフトンと性暴力被害の研究者ハーマン達が、戦争に関わる言葉を丁寧にのぞいて、一般化したPTSDの定義(DSM-3)を作り上げた。
その診断により、米国の精神科医たちは、
その後の海外派兵の帰還兵の社会問題に精神医学的に対応できた。
しかし、帰還兵のための障害名だったので、悲惨なベトナムの人々の後遺症には関心を持たなかった。
我が国日本には1995年の阪神淡路大震災の折に15年遅れで入ってきた。
復員兵の症状だったことを忘れたまま、
『外傷性ストレス障害』という名称だけ捉えて、
『心の傷』『トラウマ』という新たな造語と共にファッション(流行)となった。
20数年の歳月を経て、
ファッションを精神医学は都合よく取り込み、
製薬会社とつるんでPTSDの一般化/市民への普及を成し遂げる。
うつ病や自閉症と全く同じように、拡大解釈と薬物治療をセットにして市場拡大を成し遂げた。
日本トラウマティック学会HPを数年前に見たことがあったが、
その時には薬物治療は5番目の選択肢であったが、
最近見直すと薬物治療のガイドラインのようなものが作成されていて驚いた。
この学会も製薬会社御用学会となった。
最近、PTSDは流行語としてあちこちで乱用されている。
皇族女性の件で、マスコミに翻弄されたので複雑性PTSDとなったと記者会見する精神科医まで現れた。
*ベテランの精神科医から、さすがにそれは違うとの批判があった。
非虐待女性を保護するシェルターでは、
被害にあった女性はPTSDだとして薬物治療が強要され、
児相に保護された児童もPTSDに違いないとして薬物治療が行われる。
我々、市民もその言葉から来るイメージだけで、PTSDを乱用する。
かくいう私もそうだ。
身の毛もよだつような経験を私は忘れることは出来ない。
今でも近づけない場所もあるし、
食べられないものもいまだにある。それをPTSDとかトラウマと呼ぶ。
だが、流行語としてのPTSDと薬物治療が容認される医学的な診断名のPTSDは違わないといけないはずだ。
ましてや、流行レベル(言葉遊び)のPTSDの理解で薬物を処方することなど許されるはずもない。
残念ながら、現在のPTSD薬物治療は、このレベルである。
最後に、同コラムの野田氏の締めの記述を引用する。
以下引用
結局、アメリカ精神医学の市場拡大のための用語であるPTSDも、
さらにさかのぼって、「精神障害」という用語も矛盾だらけであり、
使用に耐えられるものではなかった。
精神障害のファッション化を正す道は、
精神障害の診断名に熱中するのを止め、分類と診断の限界を自覚し、
常に個々の人間の生き方の理解へ還っていくことである。
精神障害の診断はあくまでも保険制度のためのものであり、
その人は診断名を超えて確実に生きている。
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