なんとか なるかな・・・

050729-06[1]

「自殺総合対策の更なる推進を求める決議」に関する意見
日本自殺予防学会常務理事会
2006 年の自殺対策基本法の施行から来年で十年の節目を迎えるに当たり,我が 国の自殺問題は決して楽観できないとの認識をもとに,政府に対し,自殺問題に関 する総合的な対策の更なる推進を求める決議をされた参議院厚生労働委員会に深 く敬意を表します。そのうえで,自殺対策基本法制定以後の各地における自殺対策 の発展,学術的知見を踏まえて,今後の自殺対策基本法の改正等の議論など,我 が国の今後の自殺対策のあり方の参考にしていただくべく,学術団体としての見解 をまとめました。 はじめに本決議の問題点を述べます。


1. 本決議の最大の特徴は,「自殺の背景には、過労、生活困窮、育児や介護疲れ、 いじめや孤立などの様々な社会的要因があることが知られている」と述べて,自 殺の背景にある社会的要因に焦点を当てていることです。政治の立場から,自 殺の背景にある社会的要因に焦点を当てたことはひとつの見識と考えますが, その一方で,自殺の原因・動機として最も多い健康問題に対する自殺対策は重 要課題の一つであると考えられ、医療、保健、福祉などの地域の事業において、 障害者への支援から国民一人ひとりの健康づくりまで含めて幅広い視点での対 策が必要です。しかし、本決議では、健康問題への言及がまったくなく,その結果 として,現実に健康問題や家庭問題,経済・生活等の社会的支援を要する複雑 な困難を抱え、自殺のリスクの高い人たちへの具体的な支援の強化に関する記 述がきわめて希薄なものとなり、そのことが後述するいくつかの問題点につなが っております。



2. 本決議の提言には,学術的検証が十分行われていないことが述べられています。 「自殺対策は、自殺の多くが複数の阻害要因が連鎖した末に起きている実態を 踏まえて、個々の施策が細切れにならないよう、連鎖の類型に応じて常に関連施 策を連動させながら推進すること。」とあります。「連鎖の類型」に応じて関連施策 を連動させるには,まず「連鎖の類型」が科学的検証に耐えるものであることの 検証が必要であり,それは「連鎖の類型」を提示している研究者や活動家が,研 究者仲間や同分野の専門家による学術的評価や検証を受けることによってのみ なし得るものです。



3. 本決議の提言は,地域レベルの実践的な取組を中心とする自殺対策への転換
を促進することを目的としていると理解しておりますが,いくつかの現実政策上の 問題点がありますので列挙します。 ① 自殺予防総合対策センターの業務及び体制を抜本的に見直し,民学官協働 型の「自殺対策政策研究センター(仮称)」として組織を改編することが提案 されていますが,これを実行に移した場合,現実に自殺のリスクの高い人た ちへの支援の技術的基盤が大きく損なわれるおそれがあります。 ② 自殺未遂者・未遂者親族等支援の拠点となる病院を定めるとありますが,そ の運用によっては,既存の地域医療や救急システムに大きな負担がかかり, 自殺未遂者の診療体制にマイナスの影響を生じるおそれもあります。 ③ 全ての都道府県に自死遺族等支援に関する情報を一元的に集約する「自死 遺族等支援地域センター(仮称)」を設置することについて,当該地域におい て家族を自殺で亡くした全ての遺族に対して支援情報を提供すると書かれて いることから,個人情報保護の観点から強い懸念が生じます。


以上,本決議の主要な問題点をまとめましたが,このほかにも気付かれた問 題を別紙にまとめました。 本決議の検討に際して,残念ながら,日本自殺予防学会が関与する機会があ りませんでした。また,この十年,自殺対策の現場で活動してきた広範な自殺対 策関連学会,地方公共団体,民間団体、そしてこの領域で活動を続けている研 究者等も,広く意見を求められる機会がありませんでした。 我が国の自殺対策は,自殺対策基本法の制定によって飛躍的に向上しました。 その法律制定に努力した関係諸氏に深く敬意を表するとともに,今後の自殺対 策の方向性に大きな影響を持つ自殺対策基本法の改正の議論につきましては, 自殺対策の関連学会,地方公共団体,自殺対策に関連する民間団体等の公平 な参画のもと,科学的根拠を踏まえた,持続性のある自殺対策を構築し,自殺対 策基本法の趣旨実現に貢献していきたいと考えます。 参考までに,本学会常務理事会としてまとめた,本決議に関する意見を添付し ます。本学会は一丸として,国,地方公共団体,関係学会,民間団体等と連携し, 自殺対策の発展に努めます。 関係各位のご理解・ご協力をお願いいたします。
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