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ある弁護士のブログから

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 {自殺・自死}
自死や自死予防について、
何ら科学的な裏付けのない議論を
聞くことがよくあります。

一つには、自殺という言葉を使わず
自死という言葉にしてしまうと、
抵抗感が少なくなって自死者が増える
というものです。

言葉によって、
自死を思いとどまるということは、
これまで見てきた自死の例からすると
とても考えられません。

もう一つ例を挙げると、
自死を美化してはいけないというフレーズがあります。
私もこの10月に行われる研究会で、
レジュメに書いてしまったのですが、
考えてみれば、自死を美化するということで、
自死は美しいから自死することに抵抗がなくなる
ということもありえないことです。

自死をした人、手段、場所、時間帯、
自死の原因、きっかけなどの情報を
垂れ流すことで、
自死リスク者に自死の契機を与えてしまう
という危険は現実にあるでしょう。

実際は、自死が美しいから自死するのではなく、
自死寸前まで追い込まれていた人が、
具体的な自死についての情報を得ることによって、
制御力を失うということだと思います。

そもそも、人間も動物ですから、
死にたくないわけです。生きていたいわけです。
自死を肯定したからといって、
じゃあ自死をしようということにならないことは
我が身を振り返ってもわかるでしょう。

ましてや自死願望が高じてくるということもありません。

また、どうすると自死の美化になるのかについても
よくわからないところです。

これらの俗説は、
自死の原因についての検討が、
日本においてはほとんど議論されておらず、
原因に即した自死リスクの評価基準が
存在しないところに原因があると思います。

いろいろ、社会的要因についても言及されてきましたが、
やはり、自死対策 = うつ病治療
という図式は色濃くあります。

実は、ここに、意味のすり替えがあるように思われます。

自死者の多くがうつ病を発症しているというのは、
WHOの統計に基づいているなどと言われることがあります。
これは誤りです。

WHOは、ICD-10という国際病類分類の
F3群が、生前の罹患率が高いといっているのです。
この分類は、実は病気(disease,illness)の体系ではありません。
障害、生活の支障の体系です。disorder
(直訳すると調子が悪い、不具合ということでしょうか。)

F3群のうつ病エピソードは、大まかにいって、
よくうつ状態、興味関心や悲しみの喪失、疲れやすさを中核として、
眠れないとか食欲がない等という症状のいくつかが、
一定期間継続するという症状が出れば、
すべて該当することになります。

これまでは、うつ病も原因ごとに分類されていて
内因性  遺伝など持って生まれたもの
心因性  社会的、人的刺激によるもの
器質性  薬物や頭部外傷、合併症
精神科医が、患者との全人格的切り結びの結果
病名を診断していたそうです。

こうなると、病名が安定しないので、
症状が出れば、その障害とし、
これによって、安定的に当薬の保険適用を判断する
というメリットがあるそうです。

そうだとすると、心因性のつよいものも
F3群には含まれていることになります。
特に過労自死は、心因による精神障害を起こし、
自死が制御できなくなるわけです。

それにもかかわらず、
F3群のうつ病エピソードは、
治療の段階で、伝統的うつ病にすり変わります。

うつ病だから、脳の中のホルモンバランスが崩れている
ということになり、
そのホルモンを補う抗うつ剤が投与されることになります。
伝統的うつ病概念は、内因性の強い疾病とされているようです。

本来ならば、対人関係上の緊張状態によって
うつ的な反応を示しているにもかかわらず、
遺伝的な病気であるとされて、投薬が行われるわけです。

だから、早期発見、早期治療が、自死予防の1次予防
とされてしまっているわけです。

入口が、ストレスによる不調子も含まれていたはずなのに、
出口では遺伝性の強い病気になっているのです。

F3群には、主として心因的なうつ状態である場合も含まれています。
そうだとすると、社会的緊張関係を解除することが
1次的な予防にならなければならないはずです。

うつ状態が、内因性のものであり、遺伝的な原因ならば、
こんなにうつ状態の人間が増え、
自死者が増えるということは、遺伝学的に
ありえないことでしょう。

社会的要因、対人関係上の要因の変化が
うつ状態の人を大量に出現させて、
自死者を増やしていると考えるべきではないでしょうか。

まずは、自死はなくならないなどと知ったかぶりを言ってないで、
増えている自死者を減らすことを目標とするべきです。

ここからは文献を引用するので、用語は文献に拠ります。

アメリカの自死予防の研究科であるThomas E. Joiner.Jr.は、
うつ病患者の自殺率は、平均を上回っているが、
うつ病の大多数の人が自殺によって死なないことは明らかだとしています。

自殺の対人関係理論を提唱し、自殺は、
死への抵抗をなくす事情、
自殺願望を高める、対人関係上の孤立、
対人関係における負担感によって、
リスクが高まるとしています。
うつ病もこの中に組み込まれています。

その上で、自殺のリスク評価基準を提唱しています。
要約ですが、
所属感の減弱の有無
  他者との気遣いのある有意的なつながりの欠如
  患者が動揺したときに頼ることのできる友人もしくは親戚がいないこと
  死や離婚による最近の喪失体験
負担感の知覚
  もしその患者がいなくなったら他の人々は楽になるという発言
  自分が他の人々の重荷になっているという発言
  自己有能感の喪失(例:失業)を含む最近のストレッサー
身に付いた自殺の潜在能力
  痛みと刺激の経験
     過去の自殺企図(特に複数回)
     自殺の中断
     自己注射による薬物投与
     自傷行為(非自殺性自傷)
     身体的な暴力に頻繁にさらされたりコミットしたりすること
現在の指標
  自殺に対する高い意図
  自殺についての恐怖心のなさ
  自殺について没頭することを伴う希死念慮の長い持続時間
  大変詳細で鮮明な自殺計画
  自殺に対する特定された時間と場所
            「自殺の対人関係理論」(日本評論社)

 これらを調査するわけです。
 うつ病か否かをゲートキープしている国とは
 えらい違いです。

 私は、パワハラとかいじめとか悪い例ばかり見ているので、
 本人の発言などよりも、
 客観的な対人関係の状態を重視して評価するべきだと思う等異論はあるのですが、
  
 うつ病の症状以外に基準のないものよりも、
 よほど実用に耐えるものだと思います。

 こういった、自死の原因論、メカニズムを
 予防の観点から構築していく議論が
 自死予防の出発点として行われるべきです。

 そうでなければ、
 およそ行きあたりばったりの、
 一過性のキャンペーンが繰り返されるばかりです。

 足踏みする議論ではなく、
 前に踏み出す議論をする「場」を切望します。




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遅い時間にこんばんは

こんばんは。

>WHOは、ICD-10という国際病類分類の
>F3群が、生前の罹患率が高いといっているので>す。
>この分類は、実は病気(disease,illness)の体系で>はありません。
>障害、生活の支障の体系です。disorder
>(直訳すると調子が悪い、不具合ということでしょ>うか。

この分類は、実は病気の体系ではありません。と書かれている「この分類」というのは「F3群」のことを指しておられるんですよね。すみません、細かいことを。m(__)m


ところで、APAのDSMの方はご覧になられましたか? 私は素人なのでよくわからないんですが、ICD-10とはかなりニュアンスが違う印象があります。

私のブログを読んで下さっているかどうかわかりませんが、我が子に障害があり専門家でも認識に違いがあるので不思議に感じていました。どうやら、その認識の違いは、DSMかICDかに由来しているようだと感じています。我が子の障害についてネットを見ているとDSM基準がよく出てくるんです。我が子の障害についてのDSM基準の記述に違和感を感じています。だから、うつの捉え方も両者では違いが生じるのでは?と感じているところです。

難しい事はわかりませんけど。

DSMの欠陥を指摘している向きもあるようです。なので、田中様が感じておられる違和感(?)は、DSMが原因のような気がします。

診断基準など関係なく、うつであろうがなかろうが目の前に居るその人と向き合うことが一番大事なことだと思います。これだけいろんな病気が増えると一定の統計に基づく診断基準を設けないとDrによって診断がまちまちということにもなりかねないので、線引きは致し方ないかなとは思いますが、国際的に通用する診断基準がふたつあるというのは如何なものかと感じている次第です。

長々と失礼致しました。m(__)m
プロフィール

藍たなけん

Author:藍たなけん
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仙台に住んでいます。
青森県津軽生まれ、B型 うお座 
主人と二男と3人暮らし
自死で長男を亡くしてます。
「悲しみは愛」「悲しみは愛しさと共に」「悲しみは私の体の一部」「悲しみを奪わないで」「悲しみを消そうとしないで」などを広めています。

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